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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第67章 根無草




「零っ・・・!!」

急いでいるのに、そうはならない体を引きずりながら風呂場の前に行き、扉の向こうにいる彼の名前を精一杯の力を込めて呼んだ。

「だめだ・・・こっちへ来るな・・・っ」

苦しそうな声に、一瞬足は止まった。
けれど、それ以上に心配が勝って。

「どこか痛むの・・・?」

ゆっくり、それでも確実に、お風呂場にいる彼に近付いていった。
磨りガラス越しのシルエットしか見えないが、声だけで異常な事は分かる。

「頼むから・・・来ないでくれ・・・っ」
「嫌だ・・・放っておけない・・・!」

心配されたくないだけなんだと思っていた。

だから彼の拒絶を無視し、シャワーの音と彼の苦しそうな声が響き渡るお風呂場のドアをゆっくり開けた。

「・・・れ・・・い?」
「・・・ッ・・・」

そこには、上の服だけを脱ぎ、ズボンなどは身に付けたまま冷たいシャワーを頭から被る彼の姿があって。

背中には、棚を受けた時に出来たであろう痣や傷が大きく所々に生々しくついていた。

「酷い傷だよ・・・やっぱり病院に・・・っ」

そう言って冷えきっているであろう彼の体に触れた瞬間だった。

「・・・っ!?」

自分の体は、いつの間にか冷たい床へと押し付けられ、その上には零が跨っていて。

ポタポタと彼の髪や体から滴る水が時折降ってきては、冷たさを敏感に感じた。

「零・・・?」

怒っているようにも、苦しんでいるようにも見える表情は、いずれにせよ良い状態とは言えなかった。

「・・・・・・ッ」

息を荒くし、顔を歪ませる彼の頬へ、無意識に手が伸びていた。

そっと優しく触れると、ひんやりと冷たくなってしまっている彼を感じて。

「れい・・・っ!?」

全身に力を込めては何かを耐えるように胸元に顔を埋められ、小刻みに震える彼は明らかに異常で。

ただ、苦しそうな彼を、言うことの聞かない体で抱きしめることくらいしかできなくて。



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