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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第67章 根無草




「・・・!?」

彼が背中だけで支える棚を、周りにいた公安の人達が慌てて起こす最中、どこからともなく筒の様なものが投げられてきて。

それは、まだ意識を保っていた男達の内の一人がした事だったようで、その瞬間、そこから何かが吹き出すように煙が舞い上がった。

「奴らを連れて一旦封鎖だ!」

零が声を上げて指示すると、数名の公安警察は素早く男達を連れて上へと上がって。

「息、できるだけ止めてろ・・・っ」

何が起きているのか分からない。
それでも、今は彼の指示に従う他無いから。

再び、彼の体に顔を埋めるようにして、できるだけ息を止めた。

「降谷さん、一度病院に・・・!」
「心配無い。それより、ここは任せたぞ」

暫くして、地下への場所を封鎖し終えたであろう風見さん達に、そう指示を出しながら零は彼らに背を向けた。

「零・・・っ」

本当に良いのか、と。
ここに貴方がいなくて、病院に行かなくて、本当に・・・。

そう思って名前を呼んだが、彼から返事が返ってくることは無かった。

そのまま近くに止めてあった彼の車に乗せられると、後部座席に置いてあった小さな箱から何かを取り出し、まだ手首を拘束している鎖を外し始めた。

鎖を外すにしては緻密そうな作業を背後でしているとは思ったが、その理由は数分後に理解ができて。

「よし・・・」

彼の言葉と共に、カチャッという解錠音がして。
金属音を立てながら落ちたそれを、零は静かに袋にしまった。

南京錠。
どうやらそれが鎖に取り付けられていたようで。

裂かれてしまった服を取り払うと、一旦彼の上着を着せられ、前をきっちり閉められた。
大きい彼の服は、かろうじて短めのワンピースとも言えるくらいの丈にはなっていて。

その後、同じように足を拘束していたものも外され、やっと自由になれた手足を視界にいれて。

手首にくっきりとついた縄の痕は生々しく、それだけでさっきまでの恐怖が思い出されてきそうで。

あの男にはいくつもトラウマを作られていることが、この上なく腹立たしくて仕方が無かった。


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