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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第67章 根無草




「・・・っは、はぁ・・・だめだよ・・・そんな乱暴しちゃあ・・・」

蹴られた場所を手で抑えながら立ち上がる男が何かの合図をすると、別の男達が動き出し、今度は足首も縄で縛られた。

縄には手首同様に鎖も巻き付けられ、その先は柱のような場所に繋ぎ止められて。

「今度こそ・・・ゆっくり可愛がってあげるよ・・・」

言うなり、気味の悪い男の舌がねっとりと肩の傷を這った。
全身に鳥肌が立ち、震え始め、吐き気すら込み上げてきて。

「やめて・・・っ!!」
「そんな可愛い声じゃあ・・・やめられないよ・・・」

怖い。
単純だけれど突き落とされるような恐怖と絶望が、一気に体を蝕んでいった。

「透さ・・・っ」

涙は見せたくない。
意地でそう思っていたけど、底知れぬ恐怖はその栓を軽々と開けてしまった。

組織の事に首を突っ込んでからというもの、これ以上の恐怖も沢山味わったのに。

それでも今は・・・それ以上に恐怖を感じて。

「あんな男のどこが良いのさ・・・」
「・・・!」

明らかに、声色が変わった。
低く、威嚇するような威圧的な声。

これ以上増えることのないと思っていた恐怖は逆撫でされ、体は指一本すらも動かない状態になってしまった。

「あんなチャラチャラして・・・ちょっと料理ができて・・・女に媚び売ってるだけじゃないか・・・」

そんな状態だったのに。
まだ冷静さを保っていた思考が、男の言葉を全力で否定した。

その途端、震えは止まり、恐怖は僅かだが抑えられたようにも思えて。

「透さんを馬鹿にするのは・・・許さない」

自分のものとは思えない声で言い放てば、男達が一瞬ザワついた。

・・・が、数秒後に上がったのは男達の高らかな笑い声だった。

「この状況でよく言えたね・・・!」

子どもでも褒めるように頭を乱雑に撫でられて。

「触らないで・・・っ!」

強がってみるものの、さっきまでの威勢は男達の笑い声に吸い取られてしまって。

何度も心の中で零の名前を呼んだ。



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