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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第66章 善と悪




ーーー

「ありがとうございました」

事務所前で止められた沖矢さんの車から降りると、頭を下げて形だけのお礼を告げた。
でも、全く有難みを感じていない訳でもない。

それでも態度が冷たくなってしまうのは、自分の気持ちが反映されているからだろうか。
・・・それとも。

「一人で大丈夫ですか」

本当は一人じゃ不安だ。
けれど、沖矢さんと工藤邸にいるのはもっと不安だから。

「大丈夫です」

強がりと言えばそうだ。
でも、そうでもしてないと、意味も無く涙が溢れそうだった。

「何かあれば、いつでも呼んでください」
「・・・その必要が無い事を祈っておきます」

突き放すように言ったのに、彼からは少し優しい笑顔が返ってきて。
それが余計に私を苦しめた。

「では」

そう言って彼は、工藤邸の方へと車を走らせていった。

珍しく素直に帰ったな、と脳裏で思いながら、それはコナンくんのおかげでもあったのかもと同時に思って。

ため息を吐きながら二階に続く階段を登り、部屋へと入った。
スマホを確認するが、零からの連絡は無い。

「・・・・・・」

声が聞きたい。

安室透でも、バーボンでもない。
降谷零の声が。

電話をするか悩んだが、まだ傍にベルモットがいれば、それは彼にとって不都合となるかもしれない。

きっとベルモットは、変装している事に気付いた私のことに、勘づいているはずだ。
それでも彼女からの接触は無かった。

それは、零の言葉通り。
そして、きっとこれも、コナンくんのおかげもあるんだと思った。

「・・・不思議な子だなぁ・・・」

つい、そう漏れてしまうくらいにはそう思う。

靴を脱ぎ、ソファーに倒れるように転がると、握っていたスマホはゆっくり手から離れ床へと落ちた。

結局、彼にも沖矢さんにも迷惑をかけただけ。
力になりたいなんて思うだけ。

彼の傍にいる自信を無くしていくと共に、意識も段々と無くなっていった。


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