第66章 善と悪
生まれてくる子の為に作った曲だから、十七年もの間、その曲に歌詞がつけられることは無かった。
その事情を知った彼は、自分のせいで亡くなった子どもの為に、あの時の曲に歌詞をつけて新曲として発表しようとしたができず、あんなメモを残して死を選んだ・・・ということらしい。
マネージャーさんがそれを不可能犯罪に見せかけたのは、自殺だと分かったらその訳を探られるから。
探られてもし、この事が知られたら・・・元カノのせいで死んだなんて家族が知ったら、申し訳ないと思ったから、と彼女は話した。
「あのマネージャーさん、どんな罪に問われるの?」
警察に連行されて行く彼女を見て、園子さんが警部さんにそう尋ねていて。
「まあ、死体損壊罪だが、情状酌量で執行猶予となるだろうな・・・」
・・・罪を犯してしまったことに変わりはない。
どういう結果であれ、それは受け入れる必要がある。
パトカーに乗り込む彼女を見つめながら、優しすぎることも時に罪になることを思い知らされた。
「でも、結局分からずじまいよね、何でアサカのカが『CA』だったのか」
割り込むように、梓さんがいきなり口を挟んできて。
そういえば、そうだ。
私も、元はと言えばそれを確認しに来たんだ。
その言葉を聞いて、組織の人間達もやはりその情報が欲しいのかと更に疑問は深まった。
・・・何故、そんな情報が。
「ああ、それなら波土に聞いたことがあるよ。妊娠の事を徹夜明けの『朝、カフェ』で聞いたから、女の子なら『朝香』アルファベットで書くなら『Cafe』のCAを取って『ASACA』ってね・・・」
なるほど・・・所謂ダジャレというやつだろうか。
それでも、そこには彼なりの思いがあったんだろうから。
その名前がつけられることも、その時の曲が完成することも・・・無かったけれど。
「そっか、納得!」
僅かに不服そうにも聞こえた梓さんの声に、狙っていた情報では無かったのだと思った。
それは沖矢さんやコナンくん達も同じようで。