第65章 不行跡
「・・・・・・ッ・・・!」
そこには、ネットでしか見たことはないが、確かに波土禄道が・・・ステージ上で首を吊っているのが見えた。
コナンくんと沖矢さん、そして・・・零も、急いで波土禄道の元へと駆け寄っていった。
「あ、ちょっ・・・コナンくん!?」
それを止めようと進みかけた蘭さんに、梓さんが腕を伸ばして動きを止めさせた。
「ダメよ、エンジェル。貴方は入ってはダメ。この血塗られたステージには相応しくないわ」
・・・違う。
この人は・・・。
「え、エンジェル・・・?」
「あ、ホラ、蘭ちゃんって天真爛漫だし!」
「天使ん・・・ってダジャレ?」
自分の発言を誤魔化すようにそう言ってみせているが・・・恐らく彼女は。
「とにかく、事件の捜査は彼らに任せましょ」
そう言った後の梓さんの目付きが変わって。
・・・いや、正確には彼女は梓さんじゃない。
きっと彼女は・・・ベルモットだ。
あの時、彼女と話した時の異様な空気感は忘れたくても忘れられない。
その時の空気感と、今の空気感はよく似ている。
コナンくんや沖矢さんは、もっと早くそれに気付いていたんだ。
だからここから離れろ、と。
・・・でも、零は傍に置こうとした。
この違いは・・・何だろうか。
ーーー
程なくして警察が会場に到着した。
スタッフさん達は勿論、私達も帰る事は許されなかった。
・・・零から指示を受けた時から、それは決まっていたことだけど。
「あれ?貴女は確か・・・」
ぞろぞろと入ってくる警察官の中に、見覚えのある男性が話し掛けてきた。
「あ、どうも。高木さん・・・でしたよね?」
それはあの時、杯戸中央病院の出入口ですれ違った刑事さんで。
「やっぱりそうですよね!あの時、毛利さんといた・・・えっと・・・」
「如月です」
今も余裕がある訳ではないが、あの時は私もいっぱいだったから。
名乗ったのかどうかすら覚えていない。
今一度頭を下げると、高木さんも釣られたように深々と頭を下げた。