第65章 不行跡
「じゃあ、ウチらも帰ろっか?」
「そだね、明日学校だし」
「え、帰っちゃうの!?」
蘭さんと園子さんが帰ろうとする中、コナンくんの意思はそうでは無いようで。
納得するまで調べるつもりなんだろうか。
・・・まだ彼が波土禄道を調べていると決まった訳では無いけれど。
でも、ただのファンには見えないから。
「その方がいいかも・・・リハーサルがいつ始まるかわからないから・・・」
「ですね」
マネージャーさんの言葉に蘭さんが相槌を返しているのを見て、彼女達が帰るのならと自分も帰る事を決意した。
「じゃあ・・・私も帰ります」
「でも、最後のライブのリハーサルなら、見た方が良いのでは?」
私が帰ることを伝えた直後、沖矢さんが引き止めるようにそう言ってきて。
「昴さんには悪いですけど・・・ウチらそんなにファンじゃないから」
園子さんの言葉に一瞬耳を疑った。
ファンでも無いのに、わざわざここへ・・・?
それを疑問に思ったのは、沖矢さんも同じだったようで。
「では、ここに来ようと言い出したのは・・・」
「僕ですよ」
聞き覚えのあり過ぎる声。
それはもう暫く聞くことはないと思っていた。
ゆっくり、恐る恐る、早くも呼吸が乱れる中、声の主の姿を確認した。
そこには間違い無く、零の姿があった。
会いたい時は会えないのに、会いたくない時に限っていつも会ってしまう。
私達はそういう運命なのだろうかとすら、思えてくる。
零と目が合えば、その視線はどこか冷たさを感じて。
「ポアロの店で僕が波土さんの大ファンだと話したら、リハーサルを見られるように園子さんが手配してくれたんです」
・・・そういえば、少し前に彼女達がポアロに来た時、何か話をしていたような気もする。
その時に今日の話をしていたなんて。
そう思っている中、何故か零の背後から顔を出したのは梓さんで。