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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第65章 不行跡




出発時間になったが、中々玄関を開ける勇気が出なくて。
そろそろ出ないと間に合わない時間になるまで、玄関前を右往左往した。

覚悟を決めて玄関前に立つと、一度大きく深呼吸をして。
ドアノブに手を掛け、ゆっくり周囲を確認しながら扉を開くが、そこに沖矢さんの姿は無かった。

諦めてくれたんだと安堵すると同時に、急がなくてはという焦りが一気に襲ってきて。
慌てて施錠をすると、階段を一気に駆け下りた。

今の時間帯ではタクシーより、少し狭いが路地裏を通った方が早いはずだ、とその足を速めた。

大きい通りから外れ、小さな脇道に入って。
ここを抜ければかなりの近道になる。

そう思いながら息を切らして走っていた、その瞬間。

「・・・ッ!」

ビリッという何かが避ける音と共に、服への違和感。

その違和感を感じたスカートの方へと視線を向けると、どこかに引っ掛けてしまったのか、大きく無惨に裂かれた姿があって。

「やっちゃった・・・」

さすがにここまで大きく裂けていると、会場に行くどころか、外を歩くこともできない。
かと言って、一度家に帰って着替えてから行っても間に合うかどうか。

・・・これは行くな、という事なんだろうか。

そう感じながら、ため息を吐いては壁に背を預け、天を仰いだ。

そのまま少し悩み、それでも結論は早めに出て。

・・・やっぱり行くのをやめよう。
沖矢さんと行く訳では無いが、彼もいることを黙って行くのはどこか落ち着かないから。

そう決意が固まり、来た道を引き返そうとした時だった。

「お困りですか」

反対側から声を掛けながら近付いてきたのは、沖矢さんで。

何故ここにいるのか、さっきの出来事を見ていたのか。

色んな疑問が一気に出てくる中、とにかく裂けたスカートを慌てて手で隠して。
それがあまり意味を成していないことは分かってはいたけれど。

「・・・気にしないでください」
「そうできれば良いんですがね」

言いながら彼はジャケットを脱ぐと、私の方へと差し出してきた。



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