第65章 不行跡
「えっと・・・」
「昴さんに会いに来たんだよね?」
そう言いながらひょこっと姿を見せたのは、彼女達の後ろに隠れて見えなかったコナンくんだった。
「こ、コナンくん・・・?」
突然彼が現れたことも、彼の言葉にも驚いて。
彼の言う通りではあるのだけど、本当にそうだと言って良いのかと戸惑えば、見かねたのかコナンくんが言葉を続けた。
「ほら、昴さんって工学部でしょ?如月さん、そういうのに興味あるって前に言ってたから。最近偶に会ってるんだよね」
「へえ、そうなんですか!」
ナイスフォロー、と言って良いのだろうか。
何にせよ、とりあえずこの場をしのぐにはそれくらいの方法しかないか、と心の中で納得することにした。
「ええ、まあ・・・」
実際、興味があることは嘘では無いし。
昴さんとそういう話をしたことは無いけど。
・・・いや、そもそもどうしてコナンくんがフォローを・・・?
もしかして、私がここに来る事を知っていたんだろうか。
だとすれば話というのは・・・。
「お揃いのようですね」
突然、朝方電話越しに聞いたあの声が聞こえてきて。
門の向こうの玄関に現した姿へ目を向ければ、話に上がっていた彼がいた。
「立ち話も何ですから、どうぞ中へ。もっとも、僕の家ではありませんが、ね」
そう言いながら、沖矢さんがコナンくんに視線を向ければ、彼は気まずそうな笑顔を浮かべた。
沖矢さんには違うと伝えてはいるものの、きっとまだ彼が工藤新一だと思っているのだろう。
実際、真実ではあるけど。
でもコナンくんが明かす事を望まないのであれば、私は頑なに口を噤むだけだ。
ーーー
家に上がると、早速掃除の準備を始めて取り掛かった。
まずはあの、図書館のような書斎から。
手は掛かりそうだが、これだけ人数がいれば多少は早く終わるはず。
無駄な事はせず、早く帰りたい。
沖矢さんの言う話というのが、気にならない事もないけれど。