第64章 戒めて※
「零には我慢・・・してほしくない」
唇を離して彼の胸へと顔を埋めるなり、そう呟いた。
その瞬間、彼の鼓動が大きく感じたのはきっと気の所為じゃなくて。
「・・・煽るなと、言っただろ」
そんなつもりは無いと言えば、都合が良過ぎるか。
「ごめんなさい」
素直に謝れば、笑みを含んだ溜息が聞こえて。
そのすぐ後再び、今度は互いから唇を触れ合わせた。
「ん、ぅ・・・ふっ、ぁ・・・」
服の隙間から膨らみへと登る手は、何故か今日は温かくて。
いつもと違うそれが、どこか緊張感を作った。
「痛む時は、ちゃんと言ってくれ」
「分か・・・っ、ぁ・・・!」
言い終わるまでに彼の手は膨らみまで到達していて。
少し急いでいるようにも感じる手付きに、慣れない感覚を覚えた。
「・・・悪いが今日は、丁寧にも、優しくも・・・できそうにない」
その息遣いや言葉の吐き方で、彼の言いたい事は痛いほど伝わってくる。
その余裕の無さが、こちらにも移ってしまう程に。
ーーー
「んっ・・・い、あ・・・!」
彼の指が、ゆっくりと腟内を埋めていく。
細いけれど男らしい、何でもできてしまう器用なその指が。
「・・・力、抜いて」
「でき、な・・・っあぁ・・・!!」
指が奥にくる度、我慢しきれない甘い声が、はしたなく漏れ出ていった。
力は抜けるどころか入る一方で。
与えられる快楽によって、呼吸の仕方さえも記憶から抜き取られていった。
「れい・・・っ」
「・・・そんな声で呼ぶな」
それこそ、できるはずない。
どうやったって、今はこんな声しか出せない。
私にだって、余裕なんてものは無くて。
「もっと優しくできなくなる」
それで良い。
それが良い。
何も分からなくなるくらい、貴方の手でおかしくさせてほしい。
快楽の沼の奥底まで、深く深く突き落としてほしい。
「あ、ぁ・・・っ、んん・・・ッ!!」
指が増やされればまた一つおかしくなって。
確実に理性を手放していくその瞬間が、安心とさえ感じられた。