第63章 再出発
「・・・そうだな、彼らはずっと・・・警察官のままだ。これからも、ずっと」
何かを含んだような言い方。
・・・それは。
「もしかして・・・」
そこまで言葉が出たのに。
それ以上は出てこなくなった。
途端に、聞いてしまっても良いのか分からなくなって。
「・・・彼らはもう、この世にはいないんだ」
見たことのない、彼の表情に胸が痛くなった。
「・・・ごめんなさい」
「どうしてひなたが謝るんだ」
そう言って笑顔を作る彼に、痛みが増した。
彼が失った友人は、ヒロと呼ぶこの人だけでは無く・・・少なくともその彼を含んだ、写真に写る四人を亡くしている。
そんな事を、今更知るなんて。
彼が背負っているものは、私の想像以上に重いものなんだと、突き付けられたようだった。
「・・・寂しく、ない・・・?」
私には元々、失うものが少なかった。
だからそれを失った時、絶望も大きかったが、色んな諦めも早かったように思う。
そのせいで、諦めきれない物には人一倍、執着が強いのかもしれないけれど。
勿論、失った時に後悔や疑念はあったが、それはある意味最小限に抑えられたとも言えた。
それが幾つもになると・・・分散されるはずなんてない。
何倍にも・・・膨らむだけだと、思うから。
「多少はな。でも今は・・・」
言いかけた彼の視線がこちらへと向いて。
視線が絡み合うと、体はピクリとも動かなくなった。
彼の手が頬に添えられて。
額同士が触れ合って。
「ひなたがいるから」
そう言って微笑む顔が、私の心臓を抉った。
沢山の大切な人を失っているのに、あの時私は零を突き放してしまった。
何度後悔しても、しきれない。
今更したって仕方が無いのに。
仕方が無い、のに。
「・・・ひなた?」
自分でも、今どんな顔をしているかは分かる。
それくらい、気持ちがはっきりと顔に出ていた。
「もう、離れませんから・・・っ」
自分に言い聞かせるように。
彼へと再度誓うように。
決意を視線で伝えたつもり。
もう二度目は・・・無い。