第63章 再出発
「例えば?」
ローベッドのある和室へと移動しながら、そう問われて。
・・・例えば。
そういう風に具体的に問われると、正直困ってしまって。
本当に、彼に関することなら何でも良いのだけれど。
ふと目に入ったギターが一つの答えを与えてくれた。
「零の・・・お友達のこと、とか」
「・・・友人?」
二人でベッドを背に座りながら話すと、少し目を丸くした彼がこちらに視線を向けて。
「あ・・・駄目なら良いんです・・・!」
両手を振りながら無理強いはしないと伝え、慌てて話題を変えようとした。
「いや、それは別に構わないが・・・敬語は駄目だな」
言われて初めて、自分がまた敬語を使ってしまっていることに気付いた。
思わずその口を振っていた手で押さえるが、今更遅いことは互いに分かっていて。
「次はないぞ」
「すみま・・・っ、・・・ごめんなさい」
相変わらず学習能力が備わっていない自分に、ため息しか出なかった。
それでも彼は笑顔を保ったまま、どこからかノートパソコンを取り出してきて。
何も言わずにそれを起動させると、一つのファイルを開いてみせた。
「・・・これが僕の友人達だ」
画面に表示されたのは一枚の写真で。
服装からして・・・写真に写る彼らは皆、警察官だろうか。
「みんな・・・公安の人?」
「いや、この男・・・ヒロだけは公安だったが、それ以外は違う部署だ。これは警察学校にいた頃の写真だから」
そう言って中央に写る一人の男性を指差した。
公安だった、という彼の過去形の言葉から察するに、恐らくこの人が赤井秀一との悪い関係を作ってしまった人。
こういう言い方をすると、零がヒロと呼ぶ彼が悪いように聞こえてしまうけど。
「・・・他の人達は、今も警察官なんですか?」
そう尋ねると、彼の言葉は止まってしまって。
寂しげな目で画面を見つめる彼の表情から、目が離せなくなった。