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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第63章 再出発




「彼女はFBIだとバレないよう、庇った捜査官に身元が分かる物を全て渡し、逃がした」

覚悟は・・・できていたつもりだったけれど、それなりのダメージは受けている。

・・・いや、一切受けないのはさすがに私では難しいか。

「唯一・・・彼女が遺した物がひなたとの、あの家族写真だ」

そう・・・か。
それを見て兄は・・・私の・・・母、だと。

「・・・後は、ひなたでも想像がつくだろう」

負い目を感じた兄は、手紙を遺して・・・あの小屋で自らの命を・・・。

・・・でも。

「どうして・・・」

兄はそこで自分の命を絶つことを選んだの?
どうして私に言ってくれなかったの?
他に方法は無かったの?

そこまで疑問を並べ掛けて、当時の自分は何も・・・何も知らなかったじゃないかと、自分を責めた。

組織の事を知ったのも、兄が警察官だと知ったのも・・・兄が死んでからだ。

私が兄を責めて良い理由は、何も・・・ない。

「・・・ひなた?」

零の声は聞こえている。
けど、返事ができない。

もう起こってしまったこと。
無かった事にはできない。

それでも、あんな組織さえ・・・無かったら。

「ひなた」

真っ暗闇に佇む中、零が力強く抱きしめてきて。

苦しく、息ができないくらいに、強く。

「・・・ッ」

零に初めて会った時に言われた言葉。

仮にこれが殺人で犯人がいた場合、復讐しようなんて思わないでほしい。

その言葉は、今の私に深々と突き刺さった。

あの時から零は・・・この事を知っていた。

じゃあ、零は・・・。

私を今までどんな風に見ていたんだろう。

「・・・哀れ、でしたか・・・?」

違う、そんな事言いたい訳じゃないのに。

「何も知らない私が・・・哀れに見えませんでしたか?」

彼がそんな事思うはずが無い。
そう信じているのに。

これじゃ、まるで。

「母のことも、兄のことも・・・何も知らないくせに・・・、必死になってる私が・・・っ」

零が悪いみたいだ。


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