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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第63章 再出発




「・・・?」

この匂い、この音・・・。

もしかして・・・ここは・・・。

「目、開けて」

彼の指示を受けて、ゆっくりと瞼を上げると。

「・・・わあ・・・っ」

目の前にはキラキラと光を反射しながら揺らめく、海が広がっていて。

潮風が髪を靡かせ、海の匂いが鼻を抜けた。

「ここ・・・」

海は殆ど来たことがない。
連れて行ってくれる人もいなかったし、一緒に行く人もいなかった。

でも、ここは・・・何故か見覚えがある。

「ここはひなたのお兄さんが、大切な場所だと言って連れて来てくれたことがある」
「!」

・・・そっか、ここはあの時の。

「・・・そう、だったんですね」

数年前に私も一度だけ、兄に海へ連れて来てもらった記憶がある。
それはきっと、間違いなくここで。

綺麗な場所なのに誰も居なくて、兄が秘密の場所だと言って教えてくれた。

きっと兄は、その頃には既に警察官だったんだろう。
でも兄は何を思ってあの時・・・私をここへ連れて来たんだろうか。

あの時の細かな記憶は、あまり思い出せなくて。

「ひなた、こっち」

そう言って零が私の手を引いて。
少し離れた茂みの中を進むと、そこには。

「・・・え・・・?」

兄のお墓があった。

「ここに、彼が眠っている」

周りには何も無い小さなお墓だけれど、海の見える位置に建てられていて。

周りは勿論、お墓も綺麗にされているのを見ると、定期的に誰かが手入れしていることは目に見えて分かった。

それが誰か、なんて聞かなくても分かる。

「・・・やっと、会えた」

そんな気がした。
ここで兄はずっと私を待っていたんじゃないか、と。

ゆっくり屈み、兄の前で手を合わせた。

本当の家族じゃない私には、彼が亡くなったと聞かされただけで何もできなかった。

本当は生きているんじゃないかとすら思っていた。

・・・でも。

ここに来てやっと、色々な物を受け入れられた気がする。

そう気付けた時には、堪えきれない何かが頬を伝っていた。


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