第62章 願い事
一度二人ともベッドに座り直し、改めて互いに話す体勢をとった。
壁に背をつけ、横に並んでベッドの上に座って。
手は互いを離さないと誓うように、固く握られていて。
「・・・あの」
いくつか気になっていることの中で、教えてくれるかどうかは分からないが、どうしても気になっていることがあって。
「ベルモットの手を出してほしくない人物って・・・コナンくんだったりしますか・・・?」
月明かりが一段と明るく部屋を照らし、すっかり暗闇に慣れた目は互いの表情をしっかりと判別していて。
質問をした直後は少し驚いた様子を見せた彼だったが、すぐにその表情は冷静さを取り戻していた。
「・・・あの男から聞いたのか」
「すみません・・・」
直接的な言葉ではなかったものの、ああ言われれば誰だってそう思うはず。
それは零の返答で確信へと変わった。
「あの少年は、本当に恐ろしい子だよ」
そう言う彼の横顔は、どこか遠くを見つめていて。
実は彼は工藤新一で、組織の人間・・・灰原哀ちゃんが作った薬で幼児化しているだけなんだと言ったら・・・零は信じるだろうか。
・・・これはコナンくんとの約束だから言わないけれど。
「・・・ひなた?」
「え?あ、いえ・・・そうですね・・・」
でも、何故ベルモットが手を出してほしくないのかは、やっぱり分からなくて。
「それと・・・可能性はゼロに近いが、僕が居ない間にベルモットから接触された時は、その場で僕に連絡してほしい」
そう話す彼の手に力が込められて。
心臓が痛いくらいに跳ねると、無意識にその手を握り返していた。
「分かりました」
彼の言うように、その可能性は低いんだろうが・・・用心するに越したことはない。
「さっきも言ったように、公安としては風見に任せてある。ただ、あくまでも守るのは僕だということは信じていてほしい」
そんなの。
「・・・勿論です」
ズルい、言葉。