第62章 願い事
「あの・・・本当にもう、大丈夫なんですか?」
付き合うに当たって、それだけは確認させてほしい。
彼が公安としてではなく、降谷零としてという意味は、裏を返せばそういう情報を私の耳に入れたくないという意味もあるのかもしれない、と思って。
けれど、組織に少なからず関わりを持ってしまっている以上、私にだって知る権利はあるはずだから。
「・・・大丈夫だ。ベルモットにも手を出してほしくない人物がいるからな」
手を出してほしくない人物。
その人に少しだけ心当たりがある気がした。
昴さんがいつだったか言っていた・・・今回はコナンくんに感謝すべきだというあの言葉。
その言葉から推測するに、ベルモットの言う手を出してほしくない人物とは、コナンくんではないのかと。
その理由の推測はできないけれど。
「零は・・・大丈夫なんですか」
例えその人物・・・恐らくコナンくんに手を出さないからと言って、それはあくまでもベルモットとの約束。
もし、他の組織の人間にバレてしまったら。
「・・・心配性だな」
フッと笑う彼の額が、私の額とくっ付いて。
「何も心配しなくて良い。もう本当に大丈夫だ。だからFBIもここへ返したんだろ?」
それも・・・そうか。
あれだけ長い間、保護を受けていたんだから。
少しでも危険が残っていると判断すれば、FBIだって簡単には返さない、か。
「・・・ただ」
短く、低い声で、彼の口が耳元に移動しながら囁かれて。
吐息や、声、彼の唇が耳に触れると、体は自然とピクっと反応を示した。
「大丈夫じゃない案件もあるみたいだがな」
ゾクッと、今までとは違う悪寒のようなものを感じて。
彼の言いたい事は恐らく。
「す、昴さん・・・ですか・・・?」
そう尋ねた瞬間、彼の呼吸や動きが一瞬止まった気がして。
ここであやふやにしても仕方がないから。
例えお互いに傷付いたとしても。
ここで嘘は付いていけないと・・・思った。