第60章 天邪鬼※
「・・・っん、んぅ・・・ン・・・ッ!」
僅かに残った力で彼を押して抵抗してみせるが、そんなことでこの行為が終わるとも思ってはいなくて。
寧ろ、もう受け入れる覚悟ができている気がした。
そんな自分が・・・酷く浅ましい。
やっぱり私は。
零を・・・。
・・・また、忘れようとしているんだろうか。
「忘れてみては如何ですか」
たまたまなのか、私の心を読んだのか。
少しだけ離れた口から、私の気持ちとシンクロした彼の言葉が、悪魔の囁きのように聞こえてきて。
「今だけでも、忘れてみては」
見つめられたまま言われると、どこか洗脳されているような気にもなって。
思わずその視線から目を逸らしたが、気持ちは揺さぶられたまま落ち着くことはなくて。
「私、は・・・っ」
忘れたくない。
一時でも、零の事を忘れたくなんてない。
でも今、昴さんを受け入れようとしている。
この答えが分からなくて。
だから苦しくて。
ハッキリさせたいのに。
昴さんに会えばハッキリすると思ってたのに。
ハッキリするどころか、掻き乱されて。
余計にぐちゃぐちゃになって。
「すばる・・・さ・・・ッ」
その気持ちを誤魔化すように、彼の服をぎゅっと掴んで。
こんな不安定な自分はいらない。
早く捨ててしまいたい。
でもどうすれば良いのか分からない。
「今は僕だけを考えて、感じて頂けますか」
彼はいつも進むべき道を教えてくれる気がする。
それが正しいのかは分からないが、少なからずそれを参考にしてきた。
「昴さん・・・っ」
名前を呼んだ瞬間、考える暇なんて無く膣内に侵入する指の数が増えて。
彼の部屋に甘い声を響かせた。
「っあ・・・や、ぁあ・・・!!」
的確に弱い部分を攻められていることに、彼もまた、彼の事以外考えられないようにさせているのだと、鈍る思考回路の中で何となく感じた。