第60章 天邪鬼※
「・・・知ってます」
彼の顔と現実から視線を背けるように顔を逸らして。
何故今、赤井さんと昴さんを重ねてしまったのだろう。
彼の仕草が、赤井さんに似ていたから?
昴さんが赤井さんなら、と思ったから?
それとも、赤井さんでなくて良かったと・・・思ったから?
「赤井秀一の方が好みでしたか?」
相変わらずデリカシーというか、配慮というものが全く無い質問。
それが彼らしさでも・・・あるのだけど。
オブラートには包まない、遠回しだけれどハッキリとした言葉は、羨ましくもあり、信頼している部分でもある。
「・・・赤井さんでも、昴さんでも嫌です」
だから私も、彼にはハッキリ言えるのかもしれない。
クスッと笑う彼にまた罪悪感が募って。
これ以上増える事ができないくらい、苦しい程にそれで満たされているのに。
「でも僕は、貴女を振り向かせる事を・・・諦めてはいませんからね」
背けていた顔を引き戻され、また唇を落とされる。
自然と苦しさからは逃れる事が出来ていることに、素直に驚いて。
・・・いや、そうじゃない。
それどころでは無い。
完全に彼のペースに飲み込まれている。
そんなことが許されるはずもないのに。
でも、抵抗する体力も気力も、全て彼に奪われてしまっていて。
確実に私の中の気持ちは掻き乱されていた。
「ん・・・ッ」
蕾を刺激していた手は器用に服を脱がせ、肌を下へ下へと這っていった。
それに体が反応を示しているのは、擽ったさのせいか、快楽のせいか。
いずれにせよ、微弱な刺激は確実なそれを手に入れるには程遠くて。
「・・・ん、・・・ぁ・・・っ」
唇が離れた瞬間、彼の指は下着の上から秘部をなぞって。
やはりもどかしい刺激だけれど、それは今までのものよりも、圧倒的に快楽というものを含んでいた。