第60章 天邪鬼※
「いらない力を抜いてください」
唇が触れ合うギリギリの距離のままそう告げられ、すぐに再び蓋をされる。
何が起きているのか理解が追い付かないまま、彼のペースにどんどんと飲まれていった。
「・・・っん・・・ふ、ぅ・・・」
優しく膨らみを揉まれ、意識が何度かそっちへ向た瞬間、いつの間にかキスが苦しくなくなっている事に気が付いた。
というよりは、蓋をされた状態でも鼻からの呼吸が知らぬ内にきちんとできていて。
「お上手です」
ゆっくりと離れ、滑るように耳元へ口を移動させると、そこで囁かれて。
吐息が擽ったくて、肩が小さく震える。
その瞬間、止まっていた膨らみに添えてある手が再び動きだし、大きな手で揉みしだかれる中、指が蕾を摘み上げたり転がされたりと、色んな形で刺激をされた。
「・・・ッ、・・・ん・・・」
彼とこういう事をするのは初めてでは無いけれど。
それでもやはり、声を出してはいけない気がして。
安室透と言えど、今は彼と付き合っているのだから。
これは俗に言う・・・浮気に当たるのではないだろうか。
そこに改めて気付いた時、私の中の罪悪感は最高潮に達した。
「・・・やめ、昴さん・・・ッ!」
彼になら届くと思っていたその言葉は、素直には受け取ってもらえなくて。
さっきまで自身の舌と絡んでいた彼の舌が、今度は蕾を舐め上げた。
「ひぁ・・・ッ」
油断していたせいもあり、甘い声は確実にその口から漏れ出てしまって。
思わず口を塞ぐが、それが遅い事は痛い程分かっている。
「可愛いお声ですよ」
彼の手が頬を滑って。
その仕草はやっぱり。
赤井秀一に似ている。
そう思った瞬間、目の前の彼が赤井さんに見えた気がして。
「赤井・・・さ・・・」
居るはずがないのに。
何故、彼がここに。
「沖矢昴、ですよ」
彼にそう名乗られた瞬間、夢から醒めたように一瞬にして赤井秀一は居なくなって。
目の前にいるのは紛れもない、昴さんで。