第60章 天邪鬼※
「やめてください・・・っ」
反応を示してしまった事が恥ずかしく、そして零に申し訳なくなった。
誤魔化すように彼の手を掴んで払おうとするが、それは動くどころか固定されていて。
バランスを崩し、そのまま後ろのベッドへと倒れ込むと、すかさず昴さんは私の上へと覆い被さってきた。
「なに、す・・・」
「守ってあげられなくて、すみません」
「・・・・・・っ!」
彼に謝られる理由なんてない。
そもそもあの場に、昴さんはいなかったのだから。
痛みが来ないように、優しく、ゆっくり、彼が巻いた包帯の上で指を滑らせた。
「公安の元に戻らなくとも、僕と居るという選択肢もあるんですよ」
・・・確かに、彼は公安でもFBIでもない。
FBIがどうして昴さんの所に私を置くのか、理由は分からないが、それだけ信頼はあるという事だろうし。
ただ、昴さんは零の嫌いな人物の一人で。
「・・・私が零以外の人を選ぶことは無い・・・です」
「相変わらず頑固ですね。・・・いや、一途と言うべきでしょうか」
クスクスと笑う彼に胸が締め付けられるような思いになった。
彼も私と同じように大切な人を失い、失うことを恐れているはずなのに。
「そんなところも、好きですよ」
貴方に言われたい言葉ではないのに。
どうして、こんなにも・・・安心を覚えているのだろう。
近付いてくる顔が意味する事は察しているつもりで。
心は駄目だと拒んでいるのに。
気付いた時にはもう、唇が触れ合っていた。
最初は優しく触れるだけ。
何度も啄むように触れ合わせた後、ゆっくり舌が侵入してきて。
零とは違うキス。
罪悪感以外感じてはいけないはずなのに。
それでも感じている感情はそれだけじゃなくて。
「ん、ぅ・・・っんん・・・!」
キスの最中、前を覆い隠していた服を取り払われ、下着姿を露わにされた。
何をするのかと言いたかったが、それは全て彼によって飲み込まれてしまって。