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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第60章 天邪鬼※




「約束・・・ちゃんと守ってくださいね」

背中を向けたまま、透さんにそう告げて。
昴さんの服を引っ張り、工藤邸へと足を進めた。

彼が追ってくるかもしれない。
そんな心配は僅かだけどあった。

けれど追ってこない自信もあったから。
急ぐ事は無く、普段の足取りで行く先へと向かった。

「よろしいのですか?」
「・・・何がですか」

少し進んだ、恐らく透さんから姿は見えない場所まで来たところでそう問われて。

昴さんの服は掴んだまま。
離してしまえば、彼の元に向かってしまいそうだったから。

昴さんから問われた意味は分かっているけれど。
敢えて内容を尋ねる言葉を返した。

「あんな別れ方だと、また後悔されませんか?」

・・・どんな別れ方だって、彼と離れた後は後悔が大きい。
だったらもうどんな別れ方だって同じように思えて。

「公安の元に戻って良いんですか?」
「それは困りますね」
「では、変なこと聞かないでください」

クスクスと笑う彼に、とにかく冷たく当たるしか無かった。

彼は何も悪くないのに。

ーーー

「掛けていてください、紅茶を準備してきます」

少し遠回りをして工藤邸まで着き、いつもの部屋に入るなりそう言われた。
痛み止めを飲めばすぐに痛みは引いて。

相変わらず、すぐに飲み物を持って来たがる人だな、と脳裏で考えながらも、黙ってその指示に従った。


暫く経って、紅茶セットをトレーに乗せた彼が戻ってきて。

彼の入れる飲み物はいつも、意外と繊細な味で美味しい。
選んでいる茶葉もセンスが良くて。

・・・そこだけは、少し零と重なる部分。

「砂糖とミルク、お入れして良いですか?」
「あ・・・はい」

いつもはそこまでしないのに。
一瞬戸惑いながらも思わずその言葉を受け入れてしまった。

「夕飯はビーフシチューを作っています。今夜は冷えそうですからね」

澄んだ紅茶がミルクで濁っていく様子を見つめながら、そう告げられて。

それを食べるのが彼とで無ければ。

・・・どんなに嬉しかっただろう。



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