第59章 不見識
「変に気を使わなくて大丈夫よ。彼と私は、もうとっくに別れているんだから」
「・・・・・・え?」
その言葉に思わず聞き返してしまって。
別れている・・・ということは、昔赤井さんと付き合っていたということ?
・・・でも。
「ど、どうして・・・」
「別れたかって?・・・私がフラれたのよ」
質問を最後まで聞かないまま、ジョディさんが答えを教えてくれて。
でもその答えは正直、素直に納得できるものではなかった。
「潜入捜査でとある女性に近付く時、同時に二人の女は愛せないとか言われちゃってね」
納得できない私の気持ちを察してか、その先まで話してくれて。
ただ、その理由は更に納得という言葉を遠ざけた。
「ジョディさんはそれで良かったんですか・・・?」
私なら、どうするだろう。
そもそも零とは付き合っていないし、安室透と付き合おうと言われてからも、特に変わった事は無い。
自分だけを愛していると思っていた彼に、ある意味裏切られたと言えるその行為は・・・許される事なんだろうか。
「シュウはそういう人よ」
遠い目をしてそう告げた彼女は、やはりどこか寂しげで。
今までの彼女の様子を見ていれば、なんとなくだが分かる。
気持ちはまだあるのに、それで納得しているつもりなのだと。
「えっと・・・その女性とはまだ・・・?」
「・・・いえ、亡くなったわ」
私にあんな事を言ってくるぐらいだから、もう関係は切れているのだろうと思っての質問だった。
が、その答えは予想を遥かに上回ったもので。
「亡くなった・・・って、どうしてですか?」
ずっと彼女を問い質すように質問ばかり重ねてしまって。
でもどうにも気になって仕方がなかった。
その理由はぼんやり分かっていたものの、自分の中で気付いていないフリをした。
赤井秀一の事を・・・知ろうとしているなんて。