第59章 不見識
「昴さんは関係ありません」
例え今、会いたいと思っている人物だとしても、守ってもらいたい人とは違う。
そもそも私は、昴さんに守ってもらいたい訳でも、零に守られたい訳でもない。
私は零の、力になりたいだけだ。
「沖矢昴が嫌いか?」
「・・・どうして赤井さんが、そんな事聞くんですか」
そんな事を聞かれれば、彼に対する私の中の疑いは更に大きくなるばかりで。
それは違うと、証明される事ばかりなのに。
「沖矢昴が嫌いなら、チャンスはゼロではないだろう?」
・・・仮に昴さんの事を嫌いでも、チャンスなんてものはそもそも存在しない。
「私は零しか見ていません」
「だと良いがな」
何かを含んだ言い方に顔を歪ませながら、再度彼を睨み付けた。
この人は一体何がしたいのか、何が言いたいのか。
昴さん以上に、読めない。
「ここを出たら、君にはまた沖矢昴の元に戻ってもらう。俺がいつまでも、面倒を見る訳にはいかないんでね」
「別に赤井さんに面倒を見てほしいなんて頼んでいませんけど」
寧ろ、彼以外なら誰だって良いのに。
いや、そもそも彼が私の面倒を見たというより、時折誰かと交代しつつも、ずっと部屋の隅で私を監視していただけだ。
面倒を見られた覚えもない。
「冷たい女は嫌われるぞ」
「好きな人には冷たくありませんので」
そう返すと、また小さく笑いを漏らしながら、私を覆っていたその体を退けた。
この数日、特に話すことも無かった。
けれど、昴さん同様、彼には自分の気持ちをはっきり伝えられる気がして。
それは嫌われても良いという思いがあるからか、それとも、昴さんの言う素の私というのが・・・これなんだろうか。
いずれにせよ、零にはあまり向けることのない自分だ。