第58章 こたえ
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次に目が覚めた時は、見知らぬ天井が一番に目に入って。
薄ら開いた瞼の隙間から辺りを見回すと、そこが病院らしき場所だと言うことは気付けた。
・・・でも、眠る前の事が思い出せない。
「目が覚めたか」
突然、すぐ傍から声がして。
その方向へゆっくり顔を動かすと、椅子に座る赤井秀一の姿があった。
何故、彼がここに居るのだろう・・・。
「い・・・っ」
その事に違和感を感じながらも体を起こそうとするが、急に感じた事の無い激痛が肩に走り、思わず顔を歪ませた。
「まだ動くな。弾は取り除いたが、暫く安静にしていろ」
そう言いながら赤井さんは、起こしかけた私の体をゆっくりとベッドに戻して。
そして、彼の言葉で段々と嫌な記憶が戻ってきていた。
「・・・零は・・・どこ、ですか・・・?」
「開口一番、聞くのがそれか」
鼻で笑いながら、赤井さんは再び椅子に腰を下ろして。
「君の保護はもう暫くFBIがする事となった」
答えになっているような、なっていないような。
とりあえず、今は零に会えないという事か。
「いつ・・・帰れますか」
零の元には。
「さあな」
バッサリと切り捨てられる言葉に、何となく誰かに似た感覚を覚えて。
でもそれが誰だったか・・・思い出せない。
ズキズキと痛みを感じる肩に意識が集中すると、段々鈍くなっていた感覚が研ぎ澄まされたように、その痛みを色んな方向から拾ってきて。
「・・・っ」
「痛むか?」
声には出さないものの、痛みで顔が歪むのは抑えられなかった。
それに気付いた彼が音無くベッドに近付き、私の髪をその大きな手で撫でてくれて。
それがどこか・・・落ち着くような。
彼の問いに対しては素直に小さく頷いた。
その瞬間、部屋の扉をノックする音が響いてきて。