第58章 こたえ
※この先一部、流血表情があります。
苦手な方はご注意ください。
「それ以上喋るな。早くここを出ろ、赤井秀一!」
彼が撃たれていないことを確認すると、一先ずは安心して。
ただ、そう悠長な事を言っていられる状況でもない。
赤井さんの足元にある弾痕に気が付くと、次は彼も無傷じゃ済まされないと悟った。
それくらい、零の殺意は本物なんだと。
しかし、零の言葉は耳に入っていないのか、彼は言葉を止めなかった。
「彼女は良い捜査官だった」
そう話した赤井さんに、小さく絶望のようなものを感じて。
・・・だった。
その過去形の言葉が全てを物語っていた。
生きているか、死んでいるか。
それすらも知らなかったけど。
そう、か。
母は・・・もう・・・。
「赤井!!」
勝手に話す彼に、零の怒りは増していく一方で。
まるで私の存在は見えていないように。
「零・・・っ」
彼の名前を呼ぶがその声も届いてはいないようだった。
今の零には、赤井秀一しか・・・映っていない。
「君の母親は・・・」
構わず言葉を続ける赤井さんに一瞬視線が移ったが、ただならない殺気に、すぐ零へと視線を戻した。
彼の目を見て一瞬で分かった。
撃つ、と。
その先は体が勝手に動いていて。
気が付いたら、赤井さんの目の前に腕を広げて飛び出していた。
叫ぶ暇も無く、ただ体だけが動いた。
その瞬間はまるでスローモーションのように、ゆっくりと流れたようで。
銃声と共に感じたのは、肩への痛み。
と同時に、何故か体は宙に浮いて。
落ちる瞬間、受け止めてくれたのは赤井さんだった。
「おい、大丈夫か!」
どうしてそんな心配そうな目で見るの・・・?
何が起きたの・・・?
そう聞きたいのに、やっぱり声は出なくて。
肩から流れ出る生暖かい何かが服を濡らし、気持ち悪さを広げた。
そこは焼け付くように熱く、ドクドクと大きく脈を打っていた。