第58章 こたえ
「・・・赤井秀一・・・ッ!」
彼の驚きと怒りに満ちた表情を見れば、少なくとも赤井秀一がいる事は知らされていなかったようで。
「早かったな、安室くん」
赤井さんが親しげに声を掛けて。
全く違う空気を出している彼らの間に居る今はまるで・・・零と昴さんに挟まれているようだった。
「お前がひなたをここへ連れ出したのか・・・っ」
冷静さを欠いている彼に掛ける言葉も無くて。
ここを知っているような言い方に、やっぱり零もここが兄の最期の場所だということを知っているんだと察した。
それに、さっき赤井さんが言っていた一言。
それから推察するに、彼はここへ・・・零も呼んでいた。
ただ、その理由までは分からない。
「そろそろ教えてやったらどうだ」
「お前には関係の無い事だ!」
いつもの零じゃないみたいで。
あの時、工藤邸で見た彼と同じ・・・憎しみで満ちている彼の姿。
それはとても怖く・・・悲しいもので。
「零・・・」
いつもの彼で居てほしい。
もう少し冷静に話をしてほしい。
赤井秀一が憎いのは分かるけれど・・・そんな貴方は見たくない。
「彼女はずっと待っているぞ」
赤井さんの言葉はありがたい。
けれど、赤井さんの言葉だけは、何を言っても油となって。
零の怒りの炎を、更に強くさせるだけだった。
「も、もういいんです、赤井さん・・・!」
その一言がいけなかった。
この時、早く零の所に行っていれば良かった。
何も言わず、早くその胸に飛び込んでおけば。
「・・・・・・ッ!」
また彼が、銃を構える姿を・・・見る日が来るなんて。
「手を上げろ、赤井」
明らかに殺意に満ちている目。
さすがに撃ったりはしないんだろうが、その手はいつ引き金を引いてもおかしくはなかった。
零の呼び掛けに対して赤井さんは、煙草を口へと加え、零の言う通りにゆっくりとその手を上げた。