第7章 黒の車
コナンくんや沖矢さんに連絡入れておけば良かった、なんて今更思いながら、ただただ死を覚悟した。
「・・・話があります」
突然そう言って口を塞いでいた手を取り、乱暴に私の腕を掴んで歩き出した。少し前のめりになりながらも、必死について歩いた。
少し先に止めてあった見覚えのある車。
それに押し込まれるように乗せられると、ドアを閉められて。
すぐに彼も運転席に乗り込むと、無言のまま車は走り出し、夜の街を駆け抜けた。
どこかに行って始末されるんだろうか。
そんな考えばかり浮かんで。
先程の発信機と盗聴器用のスマホは、そのまま安室さんに取り上げられたが、カバンの中には普段使っているスマホがある。
一応コナンくんには連絡した方が良い。
私の中でそう判断し、ゆっくりと見えないようにカバンに手を入れる。
・・・が、瞬時にその手を掴まれ、その行為は阻まれた。
突然腕を掴まれたことに驚き体を跳ねさせると、そのままゆっくり視線だけを安室さんに向けて。
「妙な真似はしないでください」
そう釘を刺されてしまった。
もう、今の私にできることは何もない。
諦めてカバンから手を出し、シートベルトを握った。
兄やコナンくん、そして沖矢さんに、心の中で何度も謝った。
暫く車を走らせて、突然止まったのは山奥で。
ここが私の最期の場所だろうか、と考えながら静かに身構えた。
「ここで話しましょう」
そう安室さんに言われて。
確かに話があると言われて連れてこられたが・・・きっとそれだけではないはず。
「どうしてこんなことを?」
どこまでどう話して良いか必死に考えた。
安室さんからは、兄は交通事故で亡くなったと聞いているし。
組織のことを私が知っているのはおかしくて。
それを話してしまうと、沖矢さんやコナンくん達との約束が守れないどころか、彼らにも危険が及ぶかもしれない。
「・・・兄が、言っていたポルシェ・・・」
消え入るような声で話し始めるが、震えが止まらない。
落ち着け、落ち着いて・・・と何度も自分に言い聞かせた。
「裏通りで見つけて・・・兄と関係があるのかと思い・・・仕掛けました・・・」
掻い摘んで、少しでもそれらしく。
ただ、嘘はついていない。
屁理屈のように、そう自分の中で言い訳をしながら話した。