第58章 こたえ
「まあ、言ってくれればいつでもできるわ。簡単ではないけれど」
それはそうだろう。
国籍まで変えて、別人になるのだから。
・・・自分じゃ、無くなるのだから。
「でも、あれだけ嫌がっていた貴女がよく受ける気になったわね」
まだ受けると決まった訳ではないけど。
その可能性は極めて高い状況にはある。
「・・・透さんに、迷惑を掛けたくないので」
本人には言えないけど、ジョディさんになら言っても構わないだろうと思った。
彼には迷惑も、負担も、責任も、いらない心配も、できる限りそんなものは背負わせたくない。
私が居なくなれば、その負担は大いに減るはず。
ただ互いに・・・心に大きな穴が空くだけ。
その穴も、いつしか埋まる時があるかもしれない。
零なら尚更。
だったら私は・・・。
「まあ、今回の事が切っ掛けで受ける事にはならなそうだけど・・・私達にできる事があれば、協力するからいつでも言って」
そういえば、今回の零の事は解決したと判断して良いのだろうか。
コナンくんが少なからず関係しているんだろうけど。
また肝心な事は何も知らされない。
・・・今回も私は、蚊帳の外だ。
「・・・・・・」
大きく関係しているはずの私が何も知らないなんて。
「・・・ジョディさん」
「何かしら?」
それは。
「好きな人の隣に居るのって・・・案外、難しいですね・・・」
私の存在する意味が。
「・・・そうね」
・・・あるのだろうか。
ーーー
車を走らせてから随分と経つが、車は同じような景色ばかり続く山道を走っていて。
本当に同じ道を走っているのではないかと、錯覚するくらいに。
「あの・・・」
「ごめんなさいね、もう少しで着くから」
聞きたい事は分かっていると言わんばかりに、私の言葉を待たないまま返事をされて。
外は昼間なはずなのに。
陽の光は生い茂る木々に遮られて闇を作り、まるで夜のような雰囲気を思わせた。