第57章 再びの
「・・・っは、ぁ・・・」
離された口から空気を勢いよく取り込むと、荒くなってしまった呼吸を感じて。
「やめてください・・・!」
これ以上されたら、次に零と会った時・・・どんな顔をしたら良いのか分からない。
それでも体の疼きは増していく一方で。
「悪い事は言いません、彼はやめておいたほうがいい」
その言葉を聞いて、一瞬体の動き全てが止まって。
心臓も、荒かった呼吸も、全て。
「昴さんにそんな事言われる筋合いはありません・・・ッ」
どうして彼の事何も知らない、昴さんなんかに・・・。
「貴女が本当の彼と近くなる事は、リスクしかない。それは物理的にも、心理的にも」
本当の彼・・・降谷零の事だろうか。
あの一件で昴さんの耳にも、零について多少の情報は入っているんだろうが、でもそんなものは情報に過ぎない。
リスクしかないのは、分かっているつもりで・・・。
「つまり、一緒になることはほぼ不可能なんですよ」
「・・・・・・っ」
そうハッキリと言われて息が詰まった。
まるで心臓を抉り取られたような気分で。
心のどこかでは分かってたつもりだったのに。
安室透と付き合うこと言われた時点で、気付いてたつもりだったのに。
全部、つもり・・・だった。
どこかで僅かな可能性を探していたのかもしれない。
それを昴さんにバッサリと切られて・・・。
今、私は・・・。
「これからもこうやって、互いに傷付くつもりですか」
私が傷付くのは構わない。
でも、零が同じように傷付き、苦しみ、リスクを背負うのなら・・・。
私がこれ以上、彼の傍にいる理由があるのだろうか。
「それでも私は・・・零の傍に、居たい・・・っ」
震える、か細い声で答えて。
「零を・・・」
守りたい?
信じたい?
支えたい?
・・・どれも出来ていないくせに?
「・・・・・・ッ」
答えが出ない。
彼を愛している事には変わりない。
だけど所詮それだけで。
それ以上に何が必要なのか・・・今の私には到底見つけ出せそうも無かった。