第57章 再びの
「ええ、残念ながら」
吐く言葉の一つ一つが、やはり表情と全く合っていなくて。
彼の表情は少し楽しんでいるようにも見えた。
言葉通り本当に残念がっているのか。
工藤新一に会えないことは別に構わない、という意味なのか。
はたまた、もう別の姿で会えているから、工藤新一と会う必要は無いという意味・・・なのか。
・・・でもやはり、今の私にはどちらでも構わない。
話していないと落ち着かないくせに、零のこと意外に興味が持てなくて。
「・・・聞いてます?」
「!」
真向かいのソファーに座っていたはずなのに。
いつの間にか彼が顔を覗き込むように、目の前に立っていて。
「質問をした割には、興味が無さそうですね」
相変わらず人の心を読むことだけは上手い。
彼の目を見ていると、考えている事全てがバレてしまいそうで、咄嗟に目を逸らした。
「図星ですか」
突然、体の左右の背もたれ部分に手をつかれたと同時に、彼の片膝がソファーに乗ったと思うと、体ごとそれは沈みこんで。
一気に縮んだその距離に、鼓動が勝手に速さを増していくのを感じた。
「近いです・・・離れてください・・・っ」
小さな抵抗で彼の体を押してみるが、それが動くはずもなくて。
「嫌だと言ったらどうしますか?」
「・・・っ、昴さんの意見なんて聞いてませ、ん・・・ッ」
精一杯の力を込めて押しているはずなのに。
その距離はどんどんと縮められ、彼の顔が耳元まで来たと思うと、話している最中に柔らかいそれで舐めあげられた。
「何するんですか・・・っ」
「怒っている貴女が可愛らしくて、つい」
つい、でこんなことが許されて良い物か。
そう思いながら彼をキッと睨み付けると、力の抜けてしまった体に鞭を打って、彼を押し返した。
「彼がいない間、寂しかったのではないですか?」
耳元で囁くように話されれば、自然と体はピクッと反応を示して。
自分の意思と反する、それが心底・・・悔しかった。