第57章 再びの
「ミステリーは、お嫌いですか」
「・・・嫌いではありませんが・・・好きでもありません」
だってミステリーの大半は。
「人が亡くなる話ばかりですから」
そんな話を読むくらいなら、ハッピーエンドとオチが分かっている物語を読む方がマシだ。
「確かに、物騒な話ばかりですね」
そんな物騒な話が好きな彼やコナンくんは、私から見ればかなりの変わり者で。
ミステリー小説が好きな人なんて、世の中にごまんといるけど。
「でも、そんな中にも感動的なお話があったりするんですよ」
ミステリーで感動・・・。
今の私には結び付かないが。
「まあ、食わず嫌いをせずに、機会があれば読んでみてください」
そういえば、この家の家主である工藤優作氏はミステリー小説の作家だったはず。
何度も読み損ねているが・・・マカデミー賞作家の書いた作品であれば、気にはなる。
彼の勧め通り、機会があれば手に取ってみるかと考えながらソファーへと腰掛けて。
「そういえば。先日お会いした後、コナンくんと話はできましたか?」
その問いを聞いて、彼との最後はその時だったか、と思い出しては、コナンくんに口止めされている事も同時に思い出して。
「できましたよ。昴さんの考えは外れていたようですけど」
嘘は慣れている。
零以外なら、もう容易く平気になっていて。
「おや、それは残念」
クスッと笑いながら、言葉とは裏腹な表情を見せ付けられて。
その嘘はバレているのか、それとも最初から私が嘘をつくことが分かっていたのか。
どちらなのかは分からないが、コナンくんも黙っていてほしいと言っていた割には、昴さんにバレているのではと漏らしていたから。
この際もう、どちらでも良いんだと思った。
「工藤新一くんには、会った事がないんですか?」
探りを入れる気持ちも多少あったが、本当の所は何か話していないと落ち着かなかったから。
質問をしておきながら、正直その答えに興味は無かった。