第57章 再びの
「・・・・・・っ」
今、零はどうしているんだろう。
風見さんは怒っているだろうか。
ベルモットに目を付けられていると言っていたけど、それは解決出来ることなんだろうか。
考えても仕方の無い事なのに。
自分で選んだ事なのに。
それを不安に思ってしまうなんて。
「・・・れ、い・・・」
会いたい。
今すぐに。
会って、零からの言葉が欲しい。
何だって良い。
彼から貰える言葉なら。
「・・・ひなたさん?」
「・・・!!」
ソファーに座ったまま、組んだ手を額に押し当てながら考え込んでいた所に、突然名前を呼ばれて。
それをきっかけに一瞬で我に帰り、肩を大きく震わせながら声の主へと視線を向けた。
「紅茶、どうぞ」
「・・・ありがとう・・・ございます・・・」
そう言って差し出された紅茶は、いつもここで飲む物とは香りが違う気がして。
「リラックス効果の期待できるものを入れてきました。気休めかもしれませんが、気持ちの持ちようも大切ですよ」
こういう所が、彼の憎めないところで。
時々、妙な優しさがある。
それを本人に言えばきっと、いつも優しいですよ、なんて言われるのだろう。
そんな想像をしながら、差し出された紅茶に口を付けて。
ゆっくりと胃まで流れ込むと、じんわりと体を温めるそれに、不安で満ちていた体は少しずつ落ち着きを取り戻していくようだった。
「少しは落ち着きましたか?」
彼なりの気遣いに、多少の申し訳なさを感じながら、小さな返事と共に首を縦に動かした。
「そういえば、お兄さんの事は彼から聞けたんですか」
その問いに、思わず動きが止まってしまって。
言葉も詰まって出てこない。
それが彼にとって返答になった事は言うまでもない。
「その様子だと、まだ聞かれていないようですね」
まるで昴さんは知っているような言い方。
兄のことは何とかすると彼に言われた事があるくらいだから・・・勝手に調べて知っていてもおかしくはないけれど。