第55章 気付く
「これは僕の落ち度だ。もっとひなたを傷付けずに済む方法もあったはず」
「それは違う・・・っ」
彼は悪くない。
零は最善を尽くしてくれた。
「私が・・・弱いから・・・」
危機感もない、学習能力もない、判断力も推理力も、何もかも。
私が彼の足を引っ張っているんだ。
「零の迷惑にならないように頑張るから・・・っ、零を傷付けずに済むように・・・頑張るから・・・」
だから。
「零は自分を・・・責めないで・・・っ」
私も、悲しくなるから。
「・・・じゃあ、ひなたも自分を責めないでくれ」
初めて聞くような、彼の泣きそうな震えた声。
それに心臓が大きく反応して。
「自分をもっと大事にしろ」
その言葉と共にキツく抱き締められると、安心感からか途端に意識が遠のいて。
彼に守られるだけではダメだ。
彼を守れる存在にならないと。
私が傷付けば彼も傷付く。
そうならない為にも、私は強くならなければ。
ーーー
気付けば朝で。
いつ眠りについたのかは覚えていない。
あのままお互いキツく抱き締めあっていたことだけは覚えている。
でもその相手は、目が覚めた時にはもう居なくて。
「・・・?」
寝ぼけ眼のままテーブルに目を向けると、そこには焼き魚の乗った皿と、伏せられた茶碗とお椀が書き置きと共に置いてあった。
『おはようございます。一緒に朝食を取れなくてすみませんが、準備はしていきますので良ければ食べてください。今日はポアロに居ます。ぜひランチでも食べに来てください。その際は風見に連絡をお忘れなく。』
その書き置きとは別に、もう一枚メモが置いてあって。
そこには恐らく風見さんの電話番号だと思われる番号が書いてあった。
『覚えたら全て燃やすように』という文字と共に。
忙しいのにわざわざ作ってくれたんだと笑みが零れると共に、彼の優しさや心配を痛いほどに感じた。