第55章 気付く
そういえば、極力一人での行動は避けるように言われていたが・・・さっきのは大丈夫と言えたのだろうか。
でも特に帰る前に連絡しろとは言われていなかった。
・・・言われなくても分かるだろうということだったらどうしよう。
危機感の欠片も無い自分がいるのも、正直零がいるからで。
彼がいるから、何故か大丈夫だと思ってしまう。
それが良いと言えるのか悪いと言えるのかは・・・分からないけど。
ーーー
零から連絡を待つ間、夕食の準備を済ませて。
あまりこういう事に慣れていないせいか、少し恥ずかしさを感じながら。
陽は既に落ちかけていたが、零から連絡が来る気配が無かった為、久しぶりに事務所の様子を伺いに足を向けた。
殆ど変わっていないように思えたが、唯一変わっていたのは、私のデスク周り。
幾つか資料のようなものが積み上げられており、軽くパラパラと捲ってみるが、それは見知った物では無かった。
「・・・今朝言ってたやつかな」
そろそろ私に仕事を、と零が言っていたあの言葉。
これを纏めるのが、明日から私の仕事となるのだろう。
カモフラージュの為と言っても、探偵業はきちんとこなしている彼に僅かな笑みが零れた。
「・・・?」
何時になく片付くその部屋を見回していると、部屋の隅の方に一枚の何かが落ちていて。
徐ろに拾い上げると、それは一枚の写真だった。
「零・・・?」
そこに映るのは、恐らく警察官の制服姿の彼。
・・・と、同じ格好をしているもう一人。
「・・・ヒロ?」
写真の裏には『ヒロと一緒に』の文字が書かれていた。
写真に映る零はどこか誇らしくも恥ずかしそうでもあって。眩しい笑顔で隣に映る『ヒロ』と書かれる人物とは、かなり仲が良さそうなのが写真からでも伝わった。
・・・温かな笑顔。
写真なのに、どこかその笑顔に釣られてしまって。
零の隣にいる彼が、何故か羨ましく思えた。