第54章 少年は
見た目は小学生、でも中身はまだほんの高校生。
どちらも、私の中ではまだまだ子どもだ。
彼の表情から蘭さんに好意を抱いていることは一目瞭然だけど、それがどうにも微笑ましくて。
ただ、彼のその反応を見つめる哀ちゃんの表情はどこか寂しそうにも見えて。
その意味を知るのは、もう少し先の事だった。
「と、とりあえず・・・この事は昴さんや安室さんには黙っててね・・・!」
「大丈夫、分かってる」
・・・昴さんは気付いているんだろうけど。
「あの・・・一つだけ確認しても良い?昴さんの前で、そのネクタイや腕時計の機能を使ったことはある?」
彼がそれらの事を知っていた事を踏まえると、恐らくそれを見たんだろうが・・・。
やけにそこだけは自信が持てなくて。
「・・・変声機はあるって言えるかな。でも腕時計型麻酔銃は使ってない」
やっぱり。彼が秘密にしろと言うからには、それなりに気を付けているはず。
それなのに昴さんは、彼が持っている博士の発明品を知っていた。
しかもそれを知っていることを・・・コナンくんに黙っていろとまで言っている。
「もしかして、この事昴さんから聞いたの?」
「あ、ううん・・・!違うの・・・!昴さんが知ってたらバレないかな・・・って」
慌てて両手を振りながら否定の素振りを見せた。
この数ヶ月で、零以外の人間に嘘をつくことは、ある意味平気で上手くつけるようになったのではないかと思う。
それが良く無いことなんて・・・自分が一番よく知っている。
「・・・まあ、もうバレてそうだけど」
コナンくんがぽつりとそう呟いては視線を逸らして。
彼もその事には薄々勘づいていることだけは察した。
「そういえば貴女、組織に狙われているようだけど・・・下手すると死ぬわよ」
少しの間沈黙を守っていた哀ちゃんが突然口を開いたと思うと、いきなり物騒な事を言われ、思わず目を見開いて彼女に視線を向けた。