第54章 少年は
「もしかして・・・貴女がシェリー・・・?」
「あら、私の事知ってるの?」
そんな話があるだろうか。
ここまでくれば、何かの冗談なのかとすら思えてくる。
「ある事がきっかけで組織から抜け出す時、僕と同じ薬を飲んで体が幼児化してしまった。今はここでその薬の解毒薬を作ってもらってるんだけどね」
一度置いてけぼりをくらった思考回路は中々戻ってこなくて。
いや、そもそも彼女は・・・。
「待って・・・、ミステリートレインでシェリーは・・・!」
確かに存在していた。
そこには哀ちゃんも居て。
彼女が本当は生きていることは聞かされたが、このままではどこか説明がつかない。
「あれは僕の協力者。でも一応伝えておくと、一時的に元に戻る解毒薬の試作品はあるよ」
「頻繁に使うと抗体ができて効き目が無くなる上に、工藤新一が生きているとバレたら困るから、私は使うことを勧めてはいないけど」
哀ちゃんがコナンくんを睨むようにそう話して。
「バレたら困るって・・・?」
哀ちゃんの言葉にやりづらそうな表情を見せるコナンくんを横目に問い掛けると、再びその目付きには鋭さが戻った。
「僕は組織の怪しい取り引きを見たから、奴らは僕を消す為にそれを飲ませた。組織は工藤新一が死んだと判断してる」
なるほど・・・コナンくんが組織を追う理由が何となく分かってきた。
ただ、シェリー・・・哀ちゃんが組織を抜けた理由、そしてここに居る理由は分からないけど、何となくそれは、今聞いては行けない気がして。
「・・・どうして毛利探偵事務所に?」
「まあ、成り行きっていうのもあるんだけど・・・毛利のおじさんの所に居れば、組織に関わる情報とかが入って来るんじゃないかと思って」
「幼馴染みで大好きな彼女の傍にも居られるしね」
幼馴染み・・・?
つまり、工藤新一くんと蘭さんが・・・?
「ばっ、バーロー!そんなんじゃねぇよ!!」
哀ちゃんのその言葉に顔を真っ赤にさせて恥じらいを見せる彼に、やっと本当の彼が見えた気がした。