第54章 少年は
「訳あってこんな姿だけどね」
見た目は確かに江戸川コナンくんだ。
でも、その中身は本当に工藤新一の様で。
今、話を進め始めたのはコナンくんのようだけれど。
「・・・その理由、聞いても良いの?」
別に彼が語りたくなければそれで構わない。
気にならないと言えば、それは嘘になるけれど。
「・・・組織の人間に、ある薬を飲まされた」
意を決した様子の彼が、重そうな口を動かして。
「それは毒薬だったけど、僕は死ぬこと無く、何故か幼児化された状態で保護された」
幼児化・・・?
そんな非科学的な事が有り得るんだろうか。
でも実際に起きているのだから・・・信じるしかない。
「それを知ってるのは・・・?」
恐らく組織に関わっていない毛利探偵や蘭さんは知らないんだろう。
だとすれば、想像できるのは数人だけど。
「阿笠博士と、僕の両親。あとは・・・」
「私よ」
コナンくんが言いかけた直後、地下へと続く階段の方から歩いてくる少女・・・灰原哀ちゃんが話に割って入ってきて。
「あ、哀ちゃんも・・・?」
シェリーと瓜二つの彼女。
年齢こそ違うが、声や見た目がよく似ている。
聞き返したものの、哀ちゃんがシェリーと姉妹などだとすれば・・・その話も不思議ではないと思った。
「あの薬は、私が作ったんだから」
「・・・!?」
ギリギリ追いついていた思考回路が、再び置いてけぼりになって。
哀ちゃんが・・・新一くんをこの姿にした薬の、開発者って・・・?
「ま、待って・・・どういうこと・・・」
「灰原は・・・元組織の人間なんだよ」
この子が組織にいた?
そんな馬鹿な・・・、だって彼女は・・・こんなにも小さい・・・。
「・・・っ・・・!」
もしかして。
彼女も・・・また・・・。
「そう、灰原は組織から抜ける為に毒薬を飲んだけど、幼児化してしまった」
そんな不思議な事が本当にあるのだろうか。
でも本当にそうだとしたら・・・あの瓜二つなシェリーとは・・・もしかして。