第54章 少年は
「・・・コナンくんがよく付けてる蝶ネクタイと、その腕時計・・・見せてもらっても良いかな・・・?」
まずはそれが本当に昴さんの言った通りなのか。
それを確認しておきたい。
そこで初めて、彼の言っていた事を鵜呑みにしていた事に気付いた。
それだけ昴さんの事を、知らず知らずの内に信じてしまっていた・・・ということ、か。
そう思いながらコナンくんの動作を見つめ続け、彼がポケットから取り出した蝶ネクタイと、腕から外された時計を机の上に置くと、ゆっくりそれらを私の方へと滑らせた。
「・・・ありがとう」
何も言わない彼にお礼を告げてから、差し出されたそれを手に取った。
蝶ネクタイの裏側には、確かに機械が取り付けられていて。どうやらダイヤルを回して声を調整するようだ。
腕時計も、横のボタンを押すと時計のカバーがパカッと勢いよく開いて。よく見れば、麻酔針が出てくるであろう穴もある。
「いつから気付いてたの?」
そう尋ねる彼に、昴さんから聞いた事はとりあえず黙っていた方が良いんだと思って。
「まあ、色々あって」
「僕、如月さんの前では使ったことないと思うんだけど」
確かに使ったところを見た訳ではない。やはりどこか私の方が追い詰められている感覚だ。
でも昴さんのことは・・・なぜか黙っていろと脳が指示した。
「透さんの助手だからね」
零がどこまで知っているかはまだ知らない。
それでも、この言い方で透さんからだと思わせておけば、もし透さんに不利になったとしても、いつでもそうではないと否定はできる。
信じてくれるかは、彼次第だけど。
「・・・あの後、大丈夫だった?」
コナンくんが少し心配そうな表情になって。
そうか、彼とは昨日あんな別れ方をしていた。
それを忘れてしまうくらい・・・私は不謹慎にも浮かれていたんだ。