第54章 少年は
「・・・有り得ません」
私の考えていることが分かっている事を前提に、昴さんへそう告げて。
「まあ、眠りの小五郎は、あくまで僕の想像の話ですよ」
そう言いながらも、彼の話す素振りは確信めいているように見えた。
その様子が、更に私の中の予想も確信へと変えていく。
「・・・コナンくん、今どこにいるか知っていますか」
ここまでくれば彼に確認した方が早い。
彼が真実を語ってくれるかどうかは分からないが・・・彼のあの時の言葉。
話す時が来るかもしれないという言葉が本当ならば・・・。
当たって欲しい予想と、そうでない予想は酷く競っていて。
「彼ならまだ隣にいるんじゃないですかね。さっきお裾分けをしに行った時に姿を見ましたから」
それなら都合が良い。
今すぐにでも行って彼と話をしようと、その場を立ち上がり昴さんの前に立って。
「・・・ありがとうございました。紅茶、ご馳走様です。約束通り、スマホを返してください」
一杯だけ、という話だったから。
そう心の中だけで付け加えながら、彼へと手のひらを見せた。
「僕にもたまには連絡くださいね」
「必要ありません」
ポケットから取り出したそれを私の手に置きながらそんな事を言われて。
半ばそれを奪い取るように乱暴に手を引くと、荷物を持って足早に出口へと向かった。
「あ、これらの事を、僕から聞いたのは彼に内緒ですよ。彼も探偵、人に探られるのは嫌いな様ですから」
つくづく探偵というものは面倒な生き物なんだな、と心の中だけで思って。
「お邪魔しました」
「お昼、食べていかれないんですか」
「結構です」
返事なんて聞かなくても分かっているだろうに。
背中で断りの言葉を返し、慌ただしく工藤邸を去った。
門を抜けると駆け足のまま、阿笠邸へと向かって。
少し息切れのする中インターホンを押すと、玄関からひょこっとコナンくんの顔が覗いた。
「如月さん?」
「コナン・・・くん」
息を整えながら彼の姿を確認して。
私と昴さんの予想が正しければ・・・彼はコナンくんでは無いかもしれないけど。