第54章 少年は
「毛利探偵に助言をしてる・・・ってことですか?」
「いえ、彼はいつも現場で毛利探偵に煙たがられているみたいですよ」
まあ、普通に考えればそうだろう。
毛利探偵が解決する事件は、殺人事件などが多い事で有名だから。
そんな現場に小学生が居れば、誰だって煙たがる。
「・・・結局、何が言いたいんですか?」
こんな時まで焦らされるのは御免だと、目付きを少し鋭くして問い直した。
「彼の蝶ネクタイ、とても良いものなので是非見せてもらってはいかがですか」
紅茶に口を付けながらそう言われて。
答えになってない答えに少し怒りを感じつつも、確かに時折彼は蝶ネクタイを付けていることを思い出して。
彼の笑みから察するに、それは普通のものでは無いと言いたいんだろうが。
「・・・!」
そこまで考えると、途端に一つの予想が浮かんで。
それが表情に出ていたのか、その瞬間に昴さんがこちらを見ながら口角を上げた。
「彼は博士と、とても仲が良いみたいですからね」
私の予想を見通した上での言葉。
そんな察しの良い彼もまた・・・嫌いだ。
「その蝶ネクタイが何か?」
「ああ見えて声を自在に変えられる、ボイスチェンジャーなんですよ」
ボイスチェンジャー・・・変声機?
「昴さんのそれと同じ、ということですか?」
探偵はそんなにも声を変えたがる物なのかと不思議に思いながら、彼の首元を軽く指さして。
「まあ、そんなところですかね」
そう答えられたが、益々分からない。
コナンくんが変声機を持ち歩いている理由も、彼がわざわざそれを話す理由も。
「それがコナンくんとの話に何の関係があるんですか?」
「貴女にしては少し察しが悪いですね」
察しが良かった事なんて覚えがないが、彼にそう言われると何故か僅かだが怒りが湧いて。
それを静かに落ち着けながら、あまり機能をしない頭をフル回転させた。
コナンくんが毛利探偵の元に来てから眠りの小五郎が活躍し始めた・・・。そして彼の蝶ネクタイは変声機の機能が付いている。
・・・まさか。
いや、まさか・・・ね。