第54章 少年は
「・・・中身のある話なんですよね」
「さあ、どうでしょうか」
またやってしまった。
聞くだけ無駄だと分かっているのに。
自分の学習能力の無さは天下一のようだ。
「・・・一杯だけですよ」
「すぐに準備します」
私がそう答えると、彼は塞いでいた手を取り払い、キッチンの方へと消えていった。
どうせあの部屋へと運ぶのだろうから、と一人いつもの部屋へと向かって。定位置だったソファーへと腰掛けると、先日仕掛けてあったと言う監視カメラをキョロキョロと探してみた。
今は特にそれらしい物は見当たらないようだが、もう既に取り払われているのか、それとも私が見つけられないだけなのか。
いずれにせよ、もう私には関係のない事か、と息を抜くようにソファーへと身を預けた。
数分後に昴さんも姿を現し、持ってきた紅茶セットの乗ったトレーを机の上へと置くと、向かい側のソファーへ腰を下ろした。
「・・・それで、コナンくんの話ってなんですか」
彼の持ってきた紅茶に手を付けながら問い掛けて。適当な話だったら帰れば良い、そう思いながら。
「貴女も変だと思っているんでしょう?」
「・・・何がですか」
言いたいことは何となく分かるが、敢えて彼の言いたいことをはっきりさせる為に聞き返して。
「コナンくんの存在、全てですよ」
私の想像を超えたざっくりとした返答に思わず昴さんを見ると、至って真剣そうな彼の姿が目に入って。
「変、とは?」
「貴女も以前気にしていたように、彼には僕達が思う以上の知能がある」
確かに彼はただの小学生では無い。
それだけは・・・確かで。
「知っていますか?毛利小五郎が・・・眠りの小五郎が活躍し始めた頃から、コナンくんがあそこに住んでいることを」
・・・コナンくんがあそこに住み始めたのは、そんなに最近の事だったんだ。
蘭さんに聞く手間が省けたのはありがたいが・・・どうして昴さんがそんな事を・・・?