第6章 赤い人
「如月さん、スマホ貸してもらえますか」
「え?・・・ええ」
今まで口を出さなかった沖矢さんからの突然のお願い。
理由なんて聞ける訳もなく、大人しく沖矢さんへスマホを渡した。それを受け取ると何やら少し操作して、すぐに返された。
「僕の連絡先を入れておきました。何かあればボウヤか僕に連絡ください」
「・・・分かりました」
まだはっきりと協力するとは言っていないのに。結局彼らの思い通りに動いてしまった。
私は彼らの協力者としていることになるのか。
そうなったら安室さんは事実上、敵になるのだろうか。もし仮にこれが安室さんにバレたら。
そもそも安室さんがその組織の一員と決まった訳ではないのに。どこかでそう仮定してしまっている自分がいる。
「何か聞きたいこととかない?」
そう言われて一つの疑問を投げかける。
「コナンくんって・・・何者なの?」
山ほどある質問から選び出したのはそれ。ただの小学生ではないことは確かで。妙に大人びている言動は見た目との違和感だらけだった。でも妙な説得力のある言葉や言い方。
会った時から不思議な子だとは思っていたけれど。
「・・・僕は、ただの探偵だよ」
僕も、の間違いではないか。この街には探偵が多すぎるな、なんて心で笑いながら納得することにした。
納得せざるを得ないことも確かだったけど。
「・・・最後に一応言っておきますけど、私は安室さんの味方でもありますから」
何があっても彼に恩を受けたのは紛れもない事実だ。少し敵対心も込めて沖矢さんへ言い放った。
「それでもこちらに協力してくれるなら構いません」
不敵な笑みを浮かべて沖矢さんが答えた。安室さんやコナンくん同様、彼にも全てを見透かされている気がする。
部屋の雰囲気も相まって心底落ち着かなくなってきた。
「・・・帰りますね」
ソファーから腰を上げると沖矢さんも同じように立ち上がって。
「玄関まで送りますよ」
そう言って玄関までついてきた。
何か探られているのだろうか。そう思いながらも、玄関に向かうまでの一時の無言が少し苦痛で。必死に適当な会話の糸口を探した。
「・・・沖矢さんて、おいくつなんですか?」
「27ですが、どうしてですか」
「いえ、ちょっと気になっただけです」
私より二つ歳上。落ち着いた雰囲気から本当はもう少し上かと思っていたが。