第53章 初めて※
「あの時は昴さんに見せる私が偽りと答えましたけど・・・、どっちが本当の私か・・・分からなくなってしまいました・・・」
そんな不安、彼に言った所で、彼が困ってしまうだけなのに。
でもできるだけ、誤魔化したくなくて。
嘘を吐きたくなくて。
「どっちもひなたさんで良いんじゃないですか?」
顔は暗闇で見えないけれど、彼のそれがある方へ顔を向けて。
「これから僕に色んな貴女を見せてくれれば良い。僕しか見られない、ひなたを見せてほしい」
零、だ。
その言葉は安室透じゃない、彼の物だ。
「・・・口が悪くなることもありますよ」
「それは楽しみだ」
「かなりだらしないですし・・・」
「可愛い部分だな」
「・・・無駄に甘えますよ」
「望むところだ」
全てを受け入れてくれる彼に、苦しくなった。
でもこれは嬉しさからくる苦しさ。
胸が苦しくなって、鼻がツンと痛くなって。
目から何かが溢れてくる気がして。
「・・・零が私を嫌いになっても、好きなままでいますよ」
「それ以上に愛してやるから覚悟しておけ」
言われている最中に頬へと手が添えられれば、その先は分かっている。
想像通りの場所へ唇が落とされると、目に溜まっていた何かが一粒溢れて落ちた。
絡まっては解けて音を立てる。
いつの間にか零が上から押さえ付けるような体制になりながらも、そのキスは続けられた。
「んぅ・・・っ、ん・・・ん!」
いつの間にか外されていた下着のホック。
キスの最中にも、再び露わにされた膨らみへと彼の手が伸びて、優しく愛撫される。
「う、・・・っん、ぁん・・・ッ」
偶にできる僅かな隙間から空気を取り込むと、そこから甘い声も同時に漏れて。
殆どが彼の中へと飲み込まれてしまうそれは、彼が私へと触れる度に、何度も何度も吐き出された。