第53章 初めて※
「その部下の人は、どんな人なんですか・・・?」
零の部下ならきっと公安の人。
私の知る身近な警察官は、兄や零しか知らない。
それもつい先程知ったばかりだけど。
よくドラマなんかでは公安部と刑事部の人達とは仲が悪い様子が描かれているせいか、公安の人は怖いイメージが勝手にあって。
「まあ、公安の人間としてはまだまだですが・・・見所はある男ですよ。誠実で真面目だが、少々注意力が欠けていたり気の回らないこともある。でも、誰より真っ直ぐで頑張り屋だ」
そう話す彼の横顔は、上司の顔付きで。
その部下の人を信頼していることが、その雰囲気から滲み出ていた。
「・・・素敵な方なんですね」
「ええ、まあ」
その部下という人は・・・兄と話をしたことがあるんだろうか。
だとすれば、警察官としての兄はどんな人物だったのか、聞いてみたいとも思った。
ーーー
その後、先にお風呂へと促す彼に強めの断りを入れ、彼に先に入ってもらった。
流石にいつも先に浴びては悪いから、と。
彼とお風呂を入れ替わり、シャワーを浴びて部屋へと戻ると、零は誰かと電話をしていて。
「ああ、こちらで保護した。・・・後はそっちで処理を頼む」
・・・安室透ではないな、と悟れば、なるべく気配を消して遠くから彼の背中を見守った。
それでも、そんなに広くはない部屋に響く彼の声は、聞こうとしなくても聞こえてくるもので。
「ヤツは必ず捕まえる。・・・次は逃さない」
次は、ということは・・・赤井秀一のこと・・・?
彼は友人のことを聞きたいと言っていたけれど、それ以上に赤井秀一へは殺意のようなものを感じる。
「・・・任せたぞ、風見」
最後にそう聞こえたところで、電話は切られた。
それを確認すると、恐る恐る様子を伺うように零へと近付いた。
「温まれました?」
後ろは振り返らないまま、私へとそう問い掛けられて。
なるべく足音を立てないように近付いたはずなのに。