第52章 居場所
『いつでも戻ってきて良いですよ』
「遠慮します」
いつものような会話をすれば、さっきまでの緊張はすっかりいなくなっていて。
「そういえば昴さん、れ・・・透さんが何者か知っていたんですか・・・?」
コナンくんが直接、彼にあの言葉を告げたことを考えると、昴さんもコナンくんも、零が公安の人間だということに気付いている可能性は極めて高い。
『ええ、薄々は』
やはり彼は気付いていたんだ。
それより問題なのは。
「・・・いつからですか」
返答によっては彼を許すことはできない。
きっと零が公安だと知っていたからこそ、あの作戦を立てたんだろうし。
『確信は持っていませんでしたよ。昨日のことがきっかけでそれは確信となりましたので』
聞いたところで、昴さんには悪いが彼の言葉は、全て偽りに聞こえるのだが。
それでも聞いてしまう自分は相当学習能力が無いのか、それとも彼の言葉をどこかではきちんと信じているのか。
「・・・そうですか」
何故コナンくんが昨日のことについて、色々知っているのか気にはなっているが、それを昴さんに確認したって仕方が無いし、まともな返事が返ってくるとも思えない。
とにかく、この電話の意味を彼が理解しているのであれば、これ以上続けることに意味は無いと思った。
「昴さんにはまだ聞きたいことがありますが・・・またの機会にします」
『いつでも会いに来てください』
それは少し笑いを含んだような物言いで。
『彼が居ない時はお相手しますので』
「ふざけないでください」
どういう意味か、なんて事は聞けなかった。
自分の想像と相違があった時、いたたまれなくなるから。
『まあ、近い内に会うことになると思いますよ』
それはできれば避けたいし、叶わないでほしいと思ったが、彼の予想や予言のようなものは当たってしまうから嫌だ。
「そうならないように祈っておきますよ」
突き放すようにそう言えば、電話越しにフッと笑われたような気がした。