第52章 居場所
「・・・!!」
いきなり零が私を抱き寄せて。
零がソファーに座っている為、その顔は彼の胸元に押し込められた。
「れ、れい・・・、くるし・・・」
少し見上げるような形でキツく抱きしめられると、少し肺が圧迫されて。
突然のことで戸惑いながら、か細い声でそれを伝えるが、その腕の力はどんどんと強くなるばかりだった。
「安心しているからです」
「・・・?」
その言葉を聞けば、冷静さが少しは戻るようで。
彼の体と密着していることを改めて感じれば、その鼓動も私のすぐ傍でドクドクと音を立てていることに気付いた。
それと比例するように、私の鼓動も早くなっていって。
「安心しているから・・・気を抜いてしまったんです・・・」
「・・・ダメ、なんですか?」
彼の言葉に即座にそう言い返した。
今すぐそうなることは難しいと分かっているのに。それでも早く彼に認めてもらいたくて。
言い返した直後、強く抱きしめられた腕が緩められて、お互い視線を絡め合わせた。
「もっと私に、降谷零を・・・教えてください」
彼の為にできることが知りたい。
もっと貴方との距離を縮めたい。
案外欲張りな自分がいることを知っては、それで彼に嫌われてしまわないことを願った。
「・・・その言葉、後悔しないでくださいね」
一瞬の間の後、両手で顔を覆われながらそう警告されては顔が近付いてきて。
いつも以上に見上げる形で彼のキスを受け入れた。
甘いのにどこか切なく感じるそれに、少し苦しくなって。
それは息苦しさのせいか、はたまた気持ちのせいか。
その答えは出ないまま、ゆっくりと唇は離された。
「いい匂いがしますね。すっかり寝過ごしたようで、すみません」
何かを誤魔化すように、私の頬を撫でながらそう話して。
「大したものは作ってないですけど・・・もう少しでできるので、零はここで待っていてください」
「では、お言葉に甘えて」
その返事がとにかく嬉しくて。
彼に何かを任せて貰えることがこんなに嬉しいことに、その時初めて気付けた。