第6章 赤い人
コナンくんはどこからか何かの機械を取り出して起動させた。
・・・見たことがある。これは盗聴器を探し出すもの。それを徐ろに私へ向けた。
「・・・・・・・・・」
どうしてそんなことを。そうは思ったが、黙ってその作業を見つめた。黙って、と無言で彼に指示されたのもそうだが、到底彼に話しかけられる空気ではなかったから。
「・・・うん、大丈夫。もういいよ」
反応のなかったそれを持って、彼は部屋の奥へと進んだ。またそれを追う形でついていく。
「入って」
案内されたのは広めの応接間のようなところ。大きな机とそれを挟んで向かい合わせるように置かれたソファー。大きなテレビまである。
「好きなとこに座ってて。すぐ連れてくるから」
そう言い残してパタパタと部屋から出ていった。さっき言っていた会わせたい人のことだろうか。
一体どんな人なんだろう・・・。
とにかく座っておいた方が良いか・・・、と部屋の中へと進む。さすがに地べたに座るような部屋ではないと思いソファーへ腰掛けた。思いの外柔らかくてグッと体が沈み込む。
どこを見ても立派な家で何だか居心地が悪い。辺りを見回しながらそわそわしていると、音を立ててゆっくりと開く扉。
視線を向けると、メガネをかけた少し歳上に見える長身の男性とコナンくん。
「如月ひなたさんですか?」
「は、はい・・・そうですけど・・・」
名前を知っているのは不思議ではなかった。きっとコナンくんから聞いていたのだろうから。
疑問なのはなぜ目の前の彼が私の名前を知ることになったのか。
「はじめまして、沖矢昴と申します」
男性はそう名乗った。警戒心はあったが、不思議と嫌な人ではないと思った。コナンくんと一緒だったこともあるかもしれないけど。
沖矢さんは私と向かい合うように、コナンくんは私の隣に座った。
「沖矢さんは東都大学の大学院生なんだ」
座るなりコナンくんが沖矢さんについて教えてくれた。なるほど、と思うと同時にもっと分からなくなった。その大学院生がなぜ私に・・・?
「単刀直入に話すね」
突然彼の目付きが変わる。その視線に背筋が凍るようだった。彼は時々、子どもではなくなるような気がした。