第6章 赤い人
「・・・博士?」
「ではないんだけど」
が、どうやらその予想は違ったようで。
歩き出す彼について、私も後を追った。
暫く歩いて住宅街に来たところで、それまでずっと無言だったコナンくんが突然口を開いた。
「如月さんってさ、安室さんのこと好きだったりする?」
「す・・・!?」
突然喋ったと思ったらまさかの言葉で。子供相手に動揺してしまった。恥ずかしさや動揺の誤魔化しを兼ねて軽く咳払いする。
「・・・だったらどうする?」
ちょっと意地悪に、試すように彼に問いかけた。
「やめた方がいいと思うよ」
まさかの答えが返ってきた。はっきりと言い切るように、そして私にそう決心させるように、彼は力強く答えた。
「どうして?」
胸のざわつきを悟られないように、笑顔で真相を訪ねた。
前を歩くコナンくんが足を止める。それに合わせて私も足を止めた。
「如月さんが思っているような人ではないかもしれないから」
私の方へ振り向きながらそう告げた。彼の目つきは真剣で。真っ直ぐ私を正すようなその視線に目が離せなかった。
「・・・どういうこと」
「それをこれから話すんだよ」
そう言ってまた歩き出した。
私が思っているような人ではない・・・?
理解ができない彼の言葉に、またモヤモヤとしながら歩みを進めた。
「ここだよ」
そう言って一軒の大きな家の前で足を止めた。立派なお城のような家。庭もとても広い。
そして表札には、工藤の文字。
色々唖然としながら見つめていると、コナンくんが突然、門を開けて。
「ここ、僕の親戚の家なんだ」
なるほど、と何かに納得しながら彼に続いて敷地内に入った。
お隣も大きなお家だな、と辺りをキョロキョロと見回しながら足を進め玄関で一度立ち止まると、コナンくんは慣れた手つきで鍵を開けて。
恐る恐る中に入ると外観同様、中も立派な作りだった。
「お邪魔します・・・」
コナンくんの親戚はお金持ちなのだろうか。
工藤・・・どこかで聞いたことはあったが、今は思い出せなくて。
家の中へ足を進めようとした瞬間、コナンくんに手の平を突きつけられて。
待て、という合図。
それと共に口元に人差し指を当て、黙っての仕草。
その命令に疑問は持ったが、私はそれに黙って従う他なかった。