第51章 真実を
「・・・僕はずっと貴女の傍にいますよ」
今はその言葉が貰えるだけで十分だ。
お互いが大切な存在だということは認識できたが、それ故に付き合うという明確な関係は持てないのだと悟った。
今までそれを口にしなかったのは、恐らく彼がいつ私と離れても良いようにする為。
私がいつ、証人保護プログラムを受けても良いように。
・・・お互いの傷が少しでも浅く済むように。
「ありがとうございます」
彼の言葉にお礼を伝えれば、モヤモヤと考えていた事が少しは消えているようにも思えた。
「それと、なるべく敬語をやめませんか」
「・・・?」
「もう適度な距離を置く必要も無い」
言いながら撫でられた頬が擽ったくて。
そうか、ずっと彼が私に敬語だったのは、そういう事だったんだ。
ずっと・・・彼との間には絶妙な距離があったんだ。
「・・・すぐには無理かもしれませんけど・・・」
彼にそう言ってもらえることは嬉しい。
けれど、これで慣れてしまっているところもある。
私が彼に敬語を使っていた理由は・・・彼とは違うから。
「構いません、貴女が僕を降谷零と認めてくれるまでは」
その言い方はズルい。
「そんなの・・・」
「冗談ですよ」
・・・からかい方が少し昴さんのようで。
ふと、今まで過ごしていた時間はきっと昴さんの方が長かったんだろうなと思えば、これからはもっと透さん・・・零との時間を大切にしたいと思った。
「意地悪な零は嫌い・・・」
「僕はどんなひなたも愛してる」
突然、さん付けではない名前を呼ばれれば、心臓が飛び出てきそうな程、大きく音を立てて跳ねた。
やりとりは今までにしたことがあるようなものなのに、何故かそれだけで全く違う感覚になってしまう。
・・・今なら、彼の言う破壊力というのが分かる気がする。
「・・・やっぱりもう暫く無理そうです」
もう少し、この甘さに慣れていないと。