第51章 真実を
私が彼を大切に思えば思うほど、それは強味にもなるが同時に弱味にもなる。
それはきっと彼も同じ。
先程彼の言った言葉に、私を助けることは含まれていたが・・・でもそれは、スパイである透さん自身は含んでいないようにも思えて。
ただの勘違いなら良いのだが、彼の表情がその考えを離さないように鍵を掛けた。
「・・・透さん」
出てきたそれは思ったよりもか細くて。
「今は、零・・・ですよ」
笑顔で直されれば、また苦しくなって。
彼に守ってほしいと言ってしまったあの言葉は・・・彼を苦しめていないだろうか。
縛り付けていないだろうか。
「零・・・私が貴方の迷惑になる時は・・・・ん、ぅっ」
言いかけて、その口は彼の手で塞がれた。
驚いて目を見開きながら彼を見ると、その表情は明らかに怒っているものになっていて。
これは・・・これが、降谷零か。
「その言葉、次使ったら許さないと言いましたよ」
・・・すっかり忘れていた。
確かにそんな約束をした覚えがある。
その言葉に後ろめたさのようなものを感じてしまい、思わず彼から視線を逸らした。
「公安として貴女を守らないといけないと思ったこともあるが、僕は自分の意思で・・・一人の人間として貴女を・・・ひなたさんを守りたいと思っているんです」
その目は決意の眼差し以外の何物でもない。
彼がそれを告げ終わった頃には、蓋をしていた手は取り払われていて。
「貴女が僕を迷惑だと感じた時は言ってください。直ぐに手を・・・」
「そんなこと・・・ある訳ない・・・っ!」
荒々しく出てしまったその言葉に、自分自身も驚いてしまった。
「零までいなくなったら・・・私はどうすれば良いかわかりません」
だから作ろうとしなかった大切な人。
それでもそう思ってしまった。
心から愛してしまった。
ずっと傍に居たいと・・・思ってしまった。